不動産大学ヘッドラインニュースのお時間です。
あいさつ
今日のニュースはこちら。
不動産売買が詐欺で取り消しになった事例編。
宅建試験では、詐欺による取り消しは嫌というほど勉強しますが、実務でそんなことあるのって思っている人もいると思います。
そこで今回は、実際に業者の詐欺によって売買契約が取り消しされた裁判例を探してきましたので、
ご紹介したいと思います。
さっそくまいりましょう。
Yは、平成11年5月、自宅マンションの売却を宅建業者Xに媒介してもらうこととし、売買価格を1,650万円とする専任媒介契約を締結しました。
その締結の12日後、業者XはY宅を訪れ、本件マンション内で本件住戸より少し狭い住戸が980万円で競売に出されたので、本件住戸を1,000万円以上で売ることは難しいと告げた。
意味わからないですね。競売の意味を説明
さらに1,220万円なら本件住戸をXが買い取ってもよいと持ちかけ、Yはこれに同意し、同月末売買契約を締結しました。
その後Yは自宅が売れたので転居先を探したんですね。
ところが、Yは転居先の賃借を媒介してもらった別の宅建業者Aから、本件マンション内の本件住戸と同じ間取りの住戸が、
Aの媒介により同年5月に1,650万円で売れたこと、
さらに、本件住戸の買い希望をXに照会したところ、既に購入予定者がいるとの返事だったこと等を知らされた。
ここで業者Xが言ってたことが嘘だったわかったんですね。
このため、YはXに騙されたとして、引越し荷物を転居先から本件住戸に戻して居住を続けた。
業者Xは、手付金の返還及び債務不履行による違約金の支払を求めて提訴したが、第一審は業者Xの請求を棄却したため、Xは控訴した。
さあこの裁判結論はどうなったでしょうか。
(少し話す)
解決編いきますよ。
ポイントは2つです。
1:業者Xは、本件建物を相場より低い価格で買い取ることを計画し、本件建物に関する問い合わせを受けた事実を秘し、虚実とりまぜてYに対して本件建物を1,220万円で売却する方が得策であるかのように申し向け、これを信じたYに本件建物をXに1,220万円で売却することを決断させたものであり、Xの詐欺が成立する。
したがって、Yは、詐欺を理由に本件売買契約を取り消すことができる。
2:業者Xの詐欺行為により、Yは転居のための諸費用及び精神的損害等として120万円の損害を被ったと認められるから、Yはその損害賠償請求権をもってXに対する120万円の手付金返還債務と相殺することができる。
つまり、業者XがYに支払っていた手付金の額もちょうど120万円だったので相殺しましょうということです。
よって業者Xの請求は理由がないから、Xの控訴を棄却する。
ということで、業者の詐欺ということで契約の取り消しが認められました。
これ、話だけ聞くとひどい業者がいたもんだって思うかもしれませんが、実はこれ他人事じゃないですよ。
実務上、媒介行為の過程で、実務上、売主の希望価格で買手がみつからなくて選択肢の1つとして今回のように、媒介業者が当該物件を買い取ることはよくあることです。
だから気をつけないと、皆さんも詐欺って言われる可能性があり得るんです。
じゃあ、何に注意すればいいんでしょうか。ポイントは3つです。
1:正しい相場情報を伝える
2:新たに自らが買主の立場になることを表明する。
3:依頼者との媒介契約を合意解除した上で、売買契約手続を進める
このうち1つでも間違えると、売主から詐欺といわれる可能性がありますので十分気をつけましょう。
不動産大学ヘッドラインニュースでした。
ということでまた明日。