2022年04月26日

売買契約と賃貸借契約 性質の違い編

売買契約と賃貸借契約 性質の違い編

あいさつ


fff専門家 さん
棚田先生いつも楽しく拝見させてもらっています。一つ解除と解約の違いについてはっきりしないことがあるので質問させていただきます。

令和03年12月問09
AがBに対してA所有の甲建物を@売却した場合とA賃貸した場合についての次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

@とAの契約が解除された場合、@ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、Aでは将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。



コメント続きいきます。
@とAの契約が解除された場合、@ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、Aでは将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。
答えは○なんですが、Aの解除が将来に向かうというのは分かるのですがこれでは解約と区別がつかないように思われます。
調べてもいまいち賃貸借の場合の解除と解約の違いがわからないのでお時間がありましたらお答えいただけないでしょうか。

それぞれ分けて考えてみましょう。

■@売買契約の場合
売買契約に限らず、一般的な契約というのは解除した場合その効果が契約成立当初にさかのぼって当初から存在しなかったことになります。
これが前提です。
となると、どうなるかというと契約が当初から存在しなかった状態に巻き戻す必要があるため、あることをしなければなりません。
さてなんでしょう。
答えは、原状回復です。
AとBは元に戻すために、原状回復の義務を負うことになります。
では具体的に何をするのでしょうか。
わかりますか?
AがBに代金を返します。
BがAに建物を返します。

はい、これで終わって大丈夫でしょうか。
皆さんがAとBに相談されたらなんてアドバイスしますか?

冷静に考えてみましょう。
Bは引き渡しを受けてから返還するまで、その建物に住んでいたわけですよね。
逆にいえば、そこに住んでいなければ、ホテル借りたりレオパレス借りたりする必要があったはずですよね。
ということはB、得してませんか?住んでたんですから。

仮に住んでいなくて他人に貸していたとしましょう。
家賃を受け取っているはずです、
その家賃、受け取ったままだと不公平だと思いませんか?
時間を巻き戻したら、その利益はなかったはずですよね。

だから法律では、Bが使用収益した利益についてAに償還する必要があると決められています。

ちなみにもう1点原状回復で忘れていることがあるんですがわかりますでしょうか。

答えは利息です。

AがBに代金を返還する時に利息をつけて返還しないと不公平ですよね。
これが周辺知識です。

ここまでが@の売買の知識です。
次にAの賃貸の検証をします。

■A賃貸借契約の場合
皆さんもアパートを借りたことがあればわかると思いますが、退去しますって大家さんに伝えて、それじゃ契約時にさかのぼってなかったことにしよう、と言われた人はいないですよね。

賃貸借契約を解除した場合というのは、将来に向かってのみ効力を生じると民法で決められています。
つまり、この問題は賃貸借契約は解除しても遡らないという特性を持っていることを理解していますか?という問題なんです。

なぜなら、Aは家賃もっていますし、Bはその間建物を使用していたからです。
ウインウインです。だってそういう約束で契約しているわけですから。
これ遡るってなったら、家賃返すって話になりますから意味わからないですよね。

おまけ

それでは疑問にお答えします。
答えは○なんですが、Aの解除が将来に向かうというのは分かるのですがこれでは解約と区別がつかないように思われます。
調べてもいまいち賃貸借の場合の解除と解約の違いがわからないのでお時間がありましたらお答えいただけないでしょうか

とのことですが、まず解除と解約で意味が違うということではありません。
言葉の問題ではありません。
この問題は、@売買契約とA賃貸借契約の違いを聴いている問題です。
どっちも契約ですが売買というのは一回だけの契約ですが、賃貸借契約は継続的契約という違いがあります。
つまり契約自体の性質が違うということです。

ちなみに実務上は、賃貸借の解除とも言いますし解約ともいいます、どっちも同じです。
将来に向かって終わるだけです。


posted by 棚田行政書士 at 19:56| 東京 ☀| Comment(1) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月18日

廃業してすぐ復活は裏技なの編

廃業してすぐ復活は裏技なの編

あいさつ

ということで宅建試験で必ず出題される宅建免許の問題ですが、過去不動産大学でも何回も取り上げてきましたが、この部分、本当に重要でしかもコメント欄への質問がとても多いんです。

今日もとても参考になる質問をいただいたので、ここで解説したいと思います。


kenitiさん
はじめまして、今年、試験合格を目指し3月から学習をしております。
業務停止処分の聴聞の前に、廃業届を出した場合は、5年を待たずに免許を受けることができるとサイトの解説に書いてありました。
そこで質問ですが、聴聞前に廃業してすぐに登録できるのであれば処分の意味がないような気がします。
どのように理解すれば良いでしょうか?

はい、これどういう意味かわかりますでしょうか?
ちょっと勘違いが入っている質問なんですがそれに気がつければ宅建免許は完璧に近づいているかもしれません。
この方の勘違いがわからなければ、まだまだという感じです。
重要な知識なので解説したいと思います。

以下に該当したために免許を取り消された場合には、取り消しから5年間は免許を得ることができません。

・不正な手段で免許を取得した
・業務停止処分中に違反を重ねた
・業務停止処分に至った事由がとくにひどい場合

この三大悪事で免許取り消されたやつには5年間免許やれないということです。
ただ、免許取り消しになるような場合、予め聴聞といって、業者側の言い訳を聞く機会が設けられます。
悪い奴らというのは性根も腐っているので、
だったら、聴聞から処分が下されるまでの間に自分で廃業届出しちゃえば、免許取り消し処分を回避できるじゃん
とか考え始めるやつ出てくるんです。
もちろんそんなことは法律はお見通しなので、こういう規定があります。
聴聞の期日や場所が公示されたあと、処分が下される前に自ら廃業の届け出をした業者についても、
届出を出した日から5年間は免許を得ることができません。

こうやって悪徳業者がのさばることを防いでいるわけです。

さて、ここからが重要なんですが質問を振り返ってみましょう。

kenitiさん
業務停止処分の聴聞の前に、廃業届を出した場合は、5年を待たずに免許を受けることができるとサイトの解説に書いてありました。
聴聞前に廃業してすぐに登録できるのであれば処分の意味がないような気がします。
どのように理解すれば良いでしょうか?

はい、これネットで情報見ていると情報が断片的にしか入ってこないのでこういう誤解が起きます。

kenitiさんの言っているのは業務停止処分の聴聞のことです。
業務停止と免許取り消しは大きな違いがあります。以前の動画でもやりました。
業務停止とは、約束破った子どもから任天堂スイッチをしばらく没収する処分です。
つまり、業務停止処分の前に行う聴聞というのは、しばらくお灸をすえるかどうかを判断するために行うものです。

対して免許取り消し処分というのは、お灸をすえてもまた同じような違反をする問題児なので、
今度は任天堂スイッチを捨てちゃいます。
そして捨てたら5年間は買ってもらえません。これはきついですね。
そういう処分です。

kenitiさんは聴聞前に廃業してすぐに登録できるのであれば処分の意味がないような気がします。
ということなのですが、これは業務停止処分の場合のケースです。
業務停止処分の場合、免許自体はそもそも有効ですから、
会社を廃業して新しい会社をつくるやつはあまりいないと思います。
そもそも新しく免許申請しても、免許が手元に来るまでに数ヶ月かかったりするので、
業務停止処分を食らっておとなしくしていた方がまだましだと思います。
また以前の動画でも言いましたが、廃業すると免許番号が1に戻ります
新参者扱いされますので、普通の宅建業者であれば業務停止処分の聴聞前に自ら廃業して会社を作りなそうなんて思わないでしょう。
お分かりいただけましたでしょうか。

今回なぜこの問題を取り上げたかというと、実は本試験でこのひっかけ問題かなり狙われるからです。

ちょっとやってみましょう。

平成18年問30
E社は乙県知事から業務停止処分についての聴聞の期日及び場所を公示されたが、その公示後聴聞が行われる前に、相当の理由なく宅地建物取引業を廃止した旨の届出をした。その届出の日から5年を経過していない場合、E社は免許を受けることができない。

×

さっき言った通り、免許取消処分の前提となる聴聞の期日・場所の公示日から処分決定日までの間に宅建業廃止の届出をした場合には、届出の日から5年を経過しなければ免許を受けられませんが、よく見てくださいここ、業務停止処分って書いてありますよ。
この場合、公示日から業務停止処分の決定日までの間に宅建業を廃止したとしても、再度免許を受けることは問題ありません。
ただ、通常そんなことするやつはいないと思います。かえって面倒ですしもし処分されたとしても待っていた方が早いです。
そもそも従業員どうするんですか?
結構廃業してやり直すって大変だし時間がかかるんです。

ここ絶対に間違えないでください。

おまけ

もう1問関連でやってみましょう。

平成08年問37
不正の手段により宅地建物取引業の免許を受けたとして免許の取消処分の聴聞を受けた後で、処分に係る決定前に、相当の理由なく宅地建物取引業を廃止した旨の届出をしたが、その届出の日から5年を経過していない。

はい、免許受けられるでしょうかどうでしょうか

免許を受けることができない

はい大丈夫ですか?
こっちは免取の聴聞です。免許取消処分の前提となる聴聞の期日・場所の公示日から処分決定日までの間に宅建業廃止の届出をした場合には、届出の日から5年を経過しなければ免許を受けられません。

なんの聴聞なのか必ず確認してください。聴聞の下りだけ見て5年間受けられないとか連想しないようご注意ください。

ということでまた明日。
posted by 棚田行政書士 at 00:00| 東京 ☀| Comment(1) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月16日

2種類の登記がごっちゃになっています編

2種類の登記がごっちゃになっています編

あいさつ

宅建試験で隠れた得点源なのが不動産登記法です。
なんか難しそうな感じがするかもしれませんが、それは普段聞きなれない言葉をきくからそう思うだけで、問題自体は結構同じような選択肢が出ています。

登記って実務をやっていない人にとっては、なんか漠然と難しそうに感じますよね
今日はそんないやなイメージをこの動画で解消しますのでご安心ください。
さっそくコメントご紹介します。


伊藤 さん
棚田先生、毎日動画の更新ありがとうございます。
質問なのですが、


平成28年問14の
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。

×

コメント続き行きます。
いまいちどういうことなのかわかりません。
暗記すればいいのでしょうが、いつもミスしてしまいます。
お忙しいとは思いますがお時間のある時にわかりやすくどういうことなのか教えていただけたら幸いです。
民法は踏み込みすぎない方がいいとはわかりつつ、理解しないと気持ち悪いのです💦
どうぞよろしくお願い致します。

はい、いい質問ありがとうございます。
これは不動産業やってないとわからないですよね。そして、ここは理解できていないと何度でも間違えてしまうと思うので、
ここですっきりさせたいと思います。

まず不動産の登記って何かわかりますか?
ここがまず重要です。


不動産登記とは、土地や建物などの不動産の情報について法務局に保管されている不動産登記記録のことを言います。
ですから登記を申請するというのは、その登記記録に情報を載せる申請をするということを意味します。

不動産登記には大きく分けて2種類あります。

・表題部
・権利部

はい、なんか部活みたいですが、パニックにならないで、大丈夫これを不動産大学流に翻訳します。

・表題部というのは物理的な現況に関する情報に関する登記です。
例えば、所在地、構造、床面積などです。

・権利部というのは、権利関係に関する登記で、簡単にいうとその不動産を誰が所有しているのかが書いてあります。

謄本の実物をお見せします。
これが不動産の登記簿謄本ですが、上の方に書いてあるのが表題部、その次に書いてあるのが権利部です。

これは誰でも見れますので、例えば友達の家の謄本を取ろうと思えば、勝手に取ることも可能です。

不動産登記簿があることで、どこの家や土地を誰が持っているのかがわかるということです。


その登記記録に変更があると原則として所有者(当事者)の申請により登記官がその記録を書き換えて変更します。
ただ、実務上は申請書類を作成するのが大変なので

・表題部・・・土地家屋調査士
・権利部・・・司法書士

に依頼してやってもらうのが一般的です。

ここまでが基本情報です。
そのうえで、ここからが重要です。
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に、表題登記を申請しなければなりません)。
つまり、表題部の登記は義務なんです。
どこにどういう建物が建っているかを登記するのは、義務だということです。
不動産登記のうち、土地の所在や広さ、建物の種類・構造・床面積といった不動産の現況を明らかにする表示の登記手続きは、
公的見地(固定資産税を課税しやすくするためなどの理由から)から法律上義務になっています。

対して、権利部の登記については法律上義務じゃないんです。
ですから所有権や抵当権等の権利に関する登記は、法律上義務ではありません。

権利部というのは、あくまで自分の権利を第三者に主張できるようにするために(難しく言うと「第三者対抗要件」)する制度なので、
自分の権利を守るため、トラブルを避けるために、自発的にやるものなんです。

このように、表題部と権利部で全く性質が異なります。

さて選択肢を見てみましょう。

「所有権の保存の登記を申請しなければならない」って書いてあります。所有権保存登記は、つまり所有者が私だという権利を登記する権利部ですから、登記するかしないか、いつするかは、所有者の任意です。
ただ、実務上はすぐに登記しますけどね。

所有権の保存の登記っていう言葉が難しいですが、要するに自分が所有者だと登記簿に名前を書いてもらうことです。
ただそれだけです。


新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に、
表題登記を申請しなければなりません。

表題部と権利部どっちの登記のことを言っているのかを見抜ければ、この手の問題は簡単です。


おまけ

平成09年問14
建物を新築した場合、当該建物の所有者は、新築工事が完了した時から1ヵ月以内に、建物の所有権の保存の登記の申請をしなければならない。

×

はい、大丈夫ですかひっかかってないですか?
新築した建物または区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、そ
の所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければなりません。
が、所有権の保存の登記は権利部です。
だから任意です。
登記をするかしないか、登記するとしていつするか、は、所有者の自由です。よく覚えておきましょう。
ということでまた明日。





posted by 棚田行政書士 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする