2021年12月31日

12/31隅田川の花火が見えない!損害賠償できるのか編

不動産大学ヘッドラインニュースの時間です。

あいさつ

本当にあった不動産トラブルから学ぼう

このコーナーでは国交省のデータベースから、過去に本当にあったヤバい不動産トラブルについて、
初心者向けにわかりやすく解説することで、同じトラブルに遭わないようにするための対策について
お伝えしていきたいと思います。

実務でめちゃくちゃ役立つ内容になっていますし、実務をやっていない方も面白い内容になっていますので
ぜひ最後までご覧ください。

今日のタイトルはこちら

隅田川の花火が見えない!損害賠償できるのか

マンションを購入する動機はさまざまありますが、その眺望が気に入って購入する人も多いと思います。
今回紹介する裁判例は、隅田川の花火大会が部屋から見えるということで購入した事例なんですが、ある事情で損害賠償に発展しました。
実務で非常に重要な知識なので、ぜひ最後まで聞いてください。.
いつも通り裁判例をもとにしたフィクションでいきます。

 私は、平成15年5月、ジョン業者Yが建築し分譲するマンション(13階建て)の604号室を代金3,278万円で購入しました。
このマンションには、大別して南西向きの部屋と北東向きの部屋があったが、私Xは隅田川花火大会の花火を観望できる北西向きの部屋を、
経営する会社の取引先の接待にも使えると考えて購入しました。

また、引渡を受けた後花火大会の際の接待のために、リビングダイニングキッチンと隣の洋室の間の壁を取り払い、一部屋にした。
ところが、ジョン業者Yが、翌年平成16年5月に、本件マンションの東側の大通りを隔てた向かい(隅田川に面した)側に本件マンションと同程度の高さのジョンAマンションの建設に着手し、平成17年2月頃からは、私Xの居室から隅田川花火大会の花火を見ることは不可能となった。

私Xは、ジョンYは私Xが604号室を花火大会の際の取引先の接待用に購入したことを知りながら、
あえて花火の観望を妨げる位置に自らマンションを建築したなどとして、
ジョンY対して、不法行為に基づく損害金等293万円余を請求する訴えを提起した。

これが事件の全貌です。
私としては隅田川の花火大会みたいじゃないですか、だから買ってリフォームまでしたのに、その売った会社が目の前に分譲始めたら
さすがにふざけんなって思いますよね。
これ皆さんどう思いますか?
これ、業者に努めている人とユーザー目線の人とで考え方が変わってくると思います。

ポイントは、花火大会が見えなくなったことに対して慰謝料が認められるのかどうか、ここです。
裁判所の下した判断はこちらです。



(2) 判決の要旨
1:私Xが花火の観望という価値を重視し、これを取引先の接待にも使えると考えて406号室を購入し、
ジョンYもこれを知っていたことが認められ、室内からの観望が少なからぬ価値を有していたと認められることを考慮すると、
ジョンYは、信義則上、私Xに対し、花火の観望を妨げないように配慮すべき義務を負っていたと解するべきである。

2:ジョンYは、本件マンションを私Xに引き渡した翌年からジョンAマンションの建築に着手し、隅田川の花火が見えない状態にしてしまったのであるから、ジョンYによるジョンAマンションの建設は上記の信義則上の義務に違反し、ジョンYは損害の賠償をしなければならない。
 
3:私Xの財産上の損害についてはこれを認めるに足りない。他方、私Xの慰謝料の額を算定するに当たっては、ジョンYの行為態様のほか、室内から花火を観賞する利益は「いかなる場合にも法的に保護すべき利益とまではいえない」こと、いつかジョンY以外の誰かが同様のマンションを建築することも考えられることを十分に考慮しなければならない。

4:本件においては、私の請求に対して慰謝料60万円及び弁護士費用6万円合計66万円を認めることが相当である。


ということで、慰謝料請求が認められたんです。
業者の人からすると意外ですよね。
今回の裁判のポイントは、こちらです・

・買主が隅田川の花火大会が見えることが購入動機であると伝えていたこと
・売主はそれに配慮する信義則上の義務があること
・目の前にマンションを建てたのも売主だったこと

ポイントは、他業者ではなく売主自身が目の前にマンションを分譲したということです。
これもし他社が分譲したのであれば、慰謝料は認められなかった可能性があると思います。
というのも、私が売買やっていたときはこんな特約を入れていました。

6.本物件周辺の現況空地を含め既存の建物建付地においても、将来、建築基準法、その他法令の許認可を受けて中高層建築物
が建築される場合があり、これにともなう日影等の環境変化が生じる場合もあります。

当たり前といえば当たり前です。

今回の事例、裁判所は、ジョンYによる不法行為責任の成立を認める一方で、Aマンションは建築基準法上は適法な建物であり、いつか誰かが同様の規模のものを建築することも考えられる等の事情を勘案して、ジョンYの慰謝料の支払義務を60万円という低い金額にとどめたと考えられます。

おまけの知識

今回の事例から学ぶことはこちら
「買主の購入動機には配慮が必要」
物件を買う動機は様々ですが、それを業者として聴いた以上、それに配慮する義務が生じるということです。
例えば、今回のケースであれば、目の前にマンションが建つ可能性があることを重説で入念に説明するなどの必要性もあったと思います。
物件を気に入ってテンションが上がっている人にこそ、デメリットやリスクについては丁寧に説明してその記録を残すことがとても大切です。
くれぐれも一緒になってテンション上がったまま勢いで契約させないようご注意ください。

以上不動産大学ヘッドラインニュースでした。

posted by 棚田行政書士 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月30日

12/30重説ミスって裁判沙汰編

重説ミスって裁判沙汰編

あいさつ

ということで、今年宅建に合格された方、今後宅建士としてデビューしていくと思いますが、
試験に受かったからもう覚えた知識忘れてもいいやって思っていませんか?
飛んでもありません、
宅建士の仕事は宅建試験で覚えた知識がないと務まらない場面が多々あります。
中でもすごく重要なのが、法令上の制限の都市計画制限の部分です。
大丈夫ですか忘れていませんか>

今日は宅建士の重説ミスで裁判になって損害賠償請求された実例について解説します。

津地裁四日市支部判決 平成9年6月25日

突然ですが皆さんにお聞きします。
市街化調整区域ってどういう場所かお客さんに説明できますか?
売買の重説では、完璧に説明できないとだめですよ。宅建士の仕事ですよ、知ってないと宅建士っていえません。

市街化調整区域とは、都市計画法に基づき、都市計画区域について、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときに定める区域区分のうち、「市街化を抑制すべき区域として定める区域」です。

これを頭に入れて今回の話を聞いてください。


 買主Xは、平成2年5月、客付業者Y2及び元付業者Y3の媒介で、売主Y1から将来住宅を建てる目的で、
市街化調整区域内の土地661平方メートルを、代金2,600万円、「契約交渉金」100万円で買いました。

その契約の締結に当たり、買主Xは、将来の建築目的をY2に告げていたが、Y2はY1にその旨を告げなかった。
Y1は、Y3に対し、本件土地は市街化調整区域内のため建物が建築できない旨、契約書への明記を求めたが、
Y3は、特約として
「(ア)地目が山林の為建築の場合開発許可等を要する、
(イ)調整区域のため売主は建物について責任をとらない、
(ウ)(ア)については買主負担とする」と記載した。

Y3が作成した重要事項説明書では、「市街化調整区域」、「建築許可等を要す」、「古家有」等と記載されており、
Xは建築ができるものと信じて契約を締結した。

 平成6年6月になり、Xが本件土地の半分を売却しようとして相談したところ、
現時点では、建物の建築ができないことが判明し、Xは、Y1に対して、錯誤無効を理由に代金の返還を、
また、Y2及びY3に対して、媒介業者の説明義務違反を理由に損害賠償を求めた。

簡単にいうと、売主自身は市街化調整区域だから原則として建物が建てられないと契約書へ書くよう指示をしていたのに、
業者がそうしなくて、結果的に買主が誤解して数年後にトラブルになったという最悪な事例です。

これ裁判になったんですが、どういう結果になったのでしょうか
気になりますよね。

ポイントはこの取引登場人物が4人います。
誰がどのような責任を負うのかに注目して解決編聞いてください。

1:売主Y1については、買主Xの購入動機が伝えられておらず、要素の錯誤があったとは認められない。

2:客付け業者Y2は、本件土地は市街化調整区域内にあるので、原則として建物は建築不可である旨を明確に説明すべき注意義務を負っているにもかかわらず、これを怠り、いかにも建築ができるかのように誤信させた。

3:元付業者Y3は、不動産仲介契約はなかったものの、専門業者として助言・指導すべき義務があるのにこれを怠り、いかにも建築ができるかのように誤信させた。

4:客付け業者Y2及び元付業者Y3は、買主Xが支払った2,700万円のうち、本件土地の時価相当分を差し引いた1,300万円を連帯して買主Xに支払え。

という判決が出ました。
恐ろしい損害ですね、業者にしてみれば、

市街化調整区域って原則として建物建てらませんから、媒介に入るときには細心の注意が必要です。
間違っても、ごまかして売ろうなんて思わないことです。

おまけの知識

市街化調整区域は、建築物の建築が制限されている区域であることから、都市計画法に適合する建築物以外は建築することができません。

都市計画法では、法第29条及び法第34条で市街化調整区域に建築可能な建築物を定めていますが、いずれも建築物の用途によって詳細な基準が定められていることから、用途が確定しないと判断が出来ないことになります。

例えば、住宅の建築であっても、更地に新築するのか、既存の住宅の建替えか、共同住宅か、敷地を分割するのか等によって基準が異なり、建築の可否についての判断が異なることがあります。このため、必ずプランに基づいた事前相談で、建築の可否について審査を受ける必要があります。

とにかくデメリットについて完璧に説明してください。
この裁判例では、客付け業者Y2及び元付業者Y3が本件土地を半分ずつ、それぞれ1,200万円で買い受けることで、和解が成立したそうです。

ということでまた明日。
posted by 棚田行政書士 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月28日

12/29宅建実務あるある 更新と保証人編

宅建実務あるある 更新と保証人編

あいさつ

ということで、人気企画宅建超実務あるあるやっていきたいと思います。
宅建超実務あるあるとは、宅建試験勉強では教えてもらえない、実務でよく発生するさまざまなトラブルにどう対処したらいいのか、
不動産業界歴15年以上で今もかかわり続けている私が、アドバイスをさせていただく企画でございます。
実務であるあるのトラブルを多数紹介しますので、今後の実務にぜひ参考にしてもらえればと思います。
また実務をやったことがないという人も、業界の実情がよくわかる内容になっているのでぜひ見てください。

今日ご紹介するあるあるは、実務でも重要な知識を含んでいるのであとで裁判例なんかもご紹介します。ぜひ最後まで見てください。
ということで今日は、賃貸借契約の連帯保証人に関するあるあるです。

それではいってみましょう。

賃貸借契約期間中に
連帯保証人がやめたいと相談してくる

はい、これ結構多いと思います。
連帯保証人にはなってみたものの、やっぱりやめたくなって契約期間中に相談してくることってあるんですよね。

もちろん連帯保証人はやめられませんし、賃貸人や管理会社側としては辞めさせてあげる義理はありません。

ただ、こんな主張をしてきた連帯保証人が実際にいたそうです。

最高裁判決 平成9年11月13日

賃貸人Yは、賃借人Aと、昭和60年5月、月額賃料26万円、賃貸契約期間を2年間とするマンションの賃貸借契約を締結した。
その際、Xは、Yとの間で、本件賃貸借契約に基づきAがYに対して負担する一切の債務につき連帯保証をした。

本件賃貸借契約は、その後3回にわたり、いずれも期間を2年間として更新された。
更新に際して、YがXに対して保証意思の確認の問い合わせをしたことも、また、Xにおいて引き続き連帯保証人になることを明示的に了承することもなかった。

 ところが、2度目の更新後からAの賃料滞納が始まり、3度目の更新後はほとんど賃料の支払がされない状態となり、Yは、Xに対して、平成5年6月、Aの賃料不払を通知したうえで、Aとの契約を解除した。

賃貸人Yは、未払賃料等総額853万円余について保証債務請求権を有する旨、Xに通知した。
これに対して連帯保証人Xは、保証契約の効力は賃貸借の効力は賃貸借の合意更新後に生じた未払賃料債務等に及ばず、
仮にそうでないとしても、賃貸人のYの保証債務履行請求は信義則に反すると主張し、保証債務不存在確認請求の訴えを提起した。

つまり、更新する時に連帯保証人としての意思確認や合意を取ってないから、更新後の滞納分については保証しないよって主張をしてきたんです。

これどうなったか気になりませんか。
おそらく更新の時に連帯保証人に意思確認している管理会社ってないと思います。そんな面倒なことしませんよね。
書面を送って、再度サインをしてもらう程度でしょう。

この裁判、 
一審は連帯保証人Xの債務不存在確認請求を認容したが、二審は、連帯保証契約の効力は、合意更新後の賃貸借にも及ぶとし、また信義側に反するものではないとして、連帯保証人Xの請求を棄却しました。つまり賃貸人の勝ちです。

これ理由気になりますよね。ポイントは次のとおりです。

「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がない限り、保証人が更新後の賃貸借から生じる更新後の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務についても保証の責めを免れない。」

つまり、通常の賃貸借契約の連帯保証人は更新後も保証が継続するというのが裁判所の見解です。
連帯保証人は逃げられません。

おまけの知識

ちなみに、賃貸人(債権者)は、連帯保証人の求めに応じて、

@家賃の元本及び利息

A違約金

B損害賠償

C債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びに滞納額

などに関する情報を遅滞なく提供する義務を負うとされています。

基本は滞納したら即連帯保証人に連絡することをおすすめします。
数ヶ月分滞納してから連絡すると、連帯保証人も一気に立て替えできないことが多いので、滞納額がすくないうちから連絡をとることで、
速やかに連帯保証人から回収するとともに、連帯保証人と賃借人の間で話し合いをしてもらうことで、今後滞納しないよう抑止力を働かせるとよいでしょう。

ということでまた明日。
posted by 棚田行政書士 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする