2021年11月30日

宅建士の捺印は不要?デジタル改革関連法で実務が大きく変わります編

宅建士の捺印は不要?デジタル改革関連法で実務が大きく変わります編

こんばんは。
不動産大学ヘッドラインニュースの時間です。

あいさつ

ということで、今日は宅建業の実務に大きな影響がある法改正の最新情報についてお伝えいたします。
ニュースでご存じの方もいると思いますが、2021年5月12日に可決したデジタル改革関連法案、みなさんご存じでしょうか。
知ってるけど、宅建に影響あるなんて思ってないってかた多いんじゃないでしょうか。
実は、この中に宅建業法の改正も含まれているんです。
2022年5月までに施行予定なので、施行のタイミング次第で試験に影響してくる可能性も十分考えられます。

ではどんな改正内容なのか、結論からいうとこちらです。

重説から契約書の交付締結までオンラインで行うことが可能になります。

私、これをずっと前から待ち望んでいました。、
いったいいつまで対面で紙媒体にハンコ押して取引しなければならないのか、
あほらしくてやってられない、実務をやっていたころは本当にそう思っていましたが、ついにIT化の波がやってきました。

では具体的にどのように改正されるのか、試験問題に出てきてもわかるように解説します。

ポイントは次の2点です。

(1)書面への宅地建物取引士の押印が不要となる
(2)書面をデータ(PDFなど)で提供できるようになる


デジタル関連改正法宅建業法改正案では、「宅地または建物の売買、交換または貸借の契約が成立するまでの間に」「宅地建物取引業者の相手方に交付する書面への宅地建物取引士の押印を不要とし」「相手方等の承諾を得て」「電磁的方法により提供することができる」となっています。

ここでいう書面というのは、重要事項説明書と売買契約書、賃貸借契約書、媒介契約書などです。

業法改正によって、宅建士の押印が不要になります。

脱ハンコです。
そして相手方の承諾を得ることができれば、私の大嫌いな紙の書面じゃなくて印刷前のデータで提供することができるようになります。

すばらしいです。

この改正がどれだけ素晴らしいか、メリットをいいます。

(1)資料の印刷・輸送・保管のコストカット 保管コストはえぐい
(2)すべてオンライン化で時間短縮業務効率アップ
(3)スマホだけで取引できる

この法律が施行されれば内見から契約締結までスマホでのやり取りだけで完結します。
すばらしいです。

そして、売買の場合、あれがかかりません。そうです印紙も不要なんです。
いいことしかないですね。

ハンコって押す手間って半端ないんですよね。
契約件数多いと、手が釣ります。
やってられません。
いつかこの国からハンコがなくなってほしいです。

まだ施行日決まっていないので、決まり次第いつの試験から問われるか動画でお伝えしたいと思います。

おまけの知識

ちなみに、書面が不要になるということは、もう1つ気になることがありませんか?
そうです定期借家契約書です。
定期借家契約は借地借家法で書面による締結が必須でしたが、これもオンライン化が可能になります。

ここも念のため覚えておきましょう

以上、不動産大学最新法改正情報でした。

ということでまた明日。

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最新法改正情報編

最新法改正情報編

あいさつ

ということで、今年施行された改正民法によって過去問の考え方が変わってくるものが出てきています。
その中でも今日は重要な判例をご紹介したいと思います。

平成06年問06
Aは、Bから土地建物を購入する契約(代金5,000万円、手付300万円、違約金1,000万円)を、Bと締結し、手付を支払ったが、その後資金計画に支障を来し、残代金を支払うことができなくなった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合、Aは、実際の損害額が違約金よりも少なければ、これを立証して、違約金の減額を求めることができる。

×

損害賠償額の予定をした場合は、実際の損害額の多い少ないに関わらず、予定額の賠償額で精算されます。
ですから、実際の損害額が違約金より少ないとしても、その減額を求めることはできません。

ということだったんですが、これが法改正によって結論が変わる可能性が出てきました。
改正前の民法を見てみましょう。

平成29年改正前民法第420条
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することはできない。

このように裁判起こしても裁判所は増減できないと規定されていました。

ところが、今回の民法改正で次のようになりました。

民法第420条
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
そうなんです。
増減できないの文言が削除されているんです。

つまり、裁判所が違約金の額を増減することを容認するかたちの条文に改正されているんです。

実は、改正前の裁判で違約金の増減が認められたケースがあったんです。

平成31年1月11日の判決を、私がフィクションで解説します。

私が売主でジョンが買主です。
私が ジョンと投資用マンションの売買契約を締結しました。
ところが後になってジョンが約束通り代金を支払わないので、私は債務不履行だとして契約を解除してジョンに対して
売買契約書で決めていた代金の20%相当の違約金436万円をジョンに請求しました。

ところがジョンは、私のやり方にも問題があったなどと反論して、消費者契約法に基づいて契約を取り消し、違約金請求についても争う姿勢を見せたのです。
とんでもないやつです。ジョン。

さて、この裁判、過去問の通りの答えなら、違約金は減額にならないはずなんですが、なんと裁判では違約金の減額が認められたんです。
理由は簡単にいうと次の通りです。

・私の販売方法が強引だった
・契約解除した後すぐにその物件を別の人に売却していて実損がほとんどなかった

上記を踏まえ、信義則上違約金は代金の10%相当の218万円のみが認められると、なんと半分になってしまったのです。
これは旧民法時代の判決ですが、実際には裁判所は信義則などを理由に違約金の額を増減させることがあったようです。

なので、それに合わせる形で今回の民法改正によって

「この場合において、裁判所は、その額を増減することはできない。」

という文言が削除されたのです。

これは4月施行の改正なのですでに宅建試験に影響ある部分なので覚えておきましょう。


おまけの1問

ちなみに上記事例ではジョンが消費者契約法を持ち出していましたが、投資用マンションの買主は状況次第で事業者とみなされます。
この事例でも消費者じゃなくて事業者として扱われました。事業者になると消費者契約に該当しないので、保護の度合いが全然違ってきます。
大家さんって自分が消費者だと思っている人が結構いますが、基本的には事業者なので事業者としての自覚をもって取引することをお勧めします。



それでは予想問題を作ってみたいと思います。

予想問題
売買契約の当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができるが、裁判所は、その額を増減することがある。



ということでまた明日。
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2021年11月29日

あるある造作買取り

宅建超実務あるある 造作買取り請求で大トラブル編

あいさつ

ということで、人気企画宅建超実務あるあるやっていきたいと思います。
宅建超実務あるあるとは、宅建試験勉強では教えてもらえない、実務でよく発生するさまざまなトラブルにどう対処したらいいのか、
不動産業界歴15年以上で今もかかわり続けている私が、アドバイスをさせていただく企画でございます。
実務であるあるのトラブルを多数紹介しますので、今後の実務にぜひ参考にしてもらえればと思います。
また実務をやったことがないという人も、業界の実情がよくわかる内容になっているのでぜひ見てください。

今日のあるあるは、住居やテナント系の賃貸でよく起きるトラブルです。
契約書の条文にある対策がされていないと、同じトラブルがあなたの会社でも起きる可能性があるので、
ぜひ最後まで見ていただいて、自社の契約書の約款を見直してください。

それではさっそく行きましょう。

残置物を残していったテナントが、
あとになって残置物の買取を請求してきた。

これ、テナント扱っている会社はあるあるだと思います。
例えば、飲食店やるときって厨房機器一通りそろえるじゃないですか、でも退去する時って原状回復が条件になっていることが多いので
本来は全部撤去してからにして引き渡しをしなければなりません。
ですが実務上では、店舗が撤退するときって賃借人にお金がない状態なので、撤去するお金もないことが多いんです。
だから、オーナーや管理会社に、設備をそのまま置いていきたいと交渉されることが結構あります。

設備が比較的新しい場合、居ぬきでそのまま次のテナントが入る可能性もあるため了承することもあったりします。

今回の事例もこういう感じで、原状回復義務がある契約だけど、大家がそれを免除して残置を認めた事例です。
東京地裁平成28年9月29日
フィクションでいきます。

ジョンが私からテナントを借りてラーメン屋をやっていたのですが、まずくてはやらなかったのですぐに撤退することになりました。
でも、撤去するお金が無くなってしまったので、おいていきたいと交渉されました。
かわいそうなので 私はOKしました。

平和的でいい解決のような感じですが、なんとこのあと、ジョンが私にこう言ってきたのです。

「造作買取り請求権があるってマイケルに聞いたから、残置厨房機器全部買い取って」

こんな裁判を起こしてきたのです。

私からすればふざけるなって感じですよね。

造作買取り請求権って覚えていますか?

借地借家法第33条(造作買取請求権)
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。

これをマイケルが入れ知恵したんです。面倒ですね。

さあここで問題です。

裁判所はどういう判断をしたでしょうか。

解決編行きます。

そもそも賃貸借契約書には、原状回復して明け渡さなければならないという、原状回復特約が記載されていることから、
賃借人の賃貸人に対する有益費償還請求権や造作買取り請求権を予め法規することも内容としていたと解される。

そのうえで、今回のように原状回復義務を免除したとしても、それによって直ちに有益費償還請求権や造作買取請求権を放棄した効果まで
失われるわけではない、としてジョンの請求を棄却しました。

つまり私の勝です。

今回の事例から学ぶべきこと、それは造作買取り請求権を明確に放棄する条文を別途盛り込むことが確実だということです。

一般的なテナントの賃貸借契約書だと原状回復義務は明記してあっても、造作買取り請求権や有益費償還請求については触れられていないものが多いです。
ですから裁判で争いになった時に、今回の事例のように個別に判断していく形になってしまいます。
そこで、予めこれらの請求権を賃貸借契約書の特約欄に明記して放棄させておくと、トラブルになりにくいと思います。

おまけの知識

造作買取り請求権や有益費償還請求は実務でよく質問されるんですが、実務上、大家側がお金を出して買い取るということはほぼありません。

私のコンサル先ではこんな条文を入れています。

賃借人は、本物件の明渡しの際、甲に移転料・立退き料・損害賠償・造作買取請求権、その他名目の如何を問わず、金銭的又はその他の請求をすることができない。

ここまで入れておけば大丈夫でしょう。
原状回復しなければならない、だけの記載だと、今回のように原状回復を免除した時に争いになる可能性があるので注意しましょう。

ということでではまた。
posted by 棚田行政書士 at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする