2021年07月11日

詐害行為取消権ってなんなの編

詐害行為取消権ってなんなの編

ということで、民法の学習をしていると意味が分からん、ていう部分が多々出てきますが中でも曲者なのが詐害行為取消権です。
まず名前がやじゃないですか、詐害行為ってなにそれって感じですよね。
そこで今回は、過去問に出題された判例をもとに詐害行為がなんなのか、初心者にもわかるよう解説したいと思います。

それではまずコメントご紹介します。


ta kaさん
平成30年試験問4の問題に関して、3肢の詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する非担保債権について、消滅時効を援用することができる。の問いが今一つ理解出来ません。もし可能であれば分かり易くご説明頂けないでしょうか?お忙しいところ恐縮ですが、宜しくお願い致します。

とのことです。では早速その問題をやってみましょう。


平成30年問04
詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。



はい、ちんぷんかんぷんという人、大丈夫です、これからわかるように説明します
まず詐害行為ってなんでしょうか。
民法初心者の方は、ここで?
?ってなりますよね。私もなりました、

詐害行為とは、債務者が債権者を害することをわかって,自分の財産を減少させることを言います。

ここ法改正もあったので条文を読んでみましょう。
第424条
1.債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

はい、これでもよくわからないですよね。
具体例で言います。

たとえば,債権者から差押えを受けそうになったので,債務者はほかに資産がないにもかかわらず,差押えを免れるために財産を他人に贈与するようなことをいいます。これって、債権者困りますよね、債務者あくどいですよね。
ですから民法は,債務者の詐害行為に対して受け取った人が債権者が被害受けることを知っていたなら、
債権者を保護するために詐害行為取消権を認めています。

昔、某タレントが財産を差し押さえられそうになったので、奥さんと離婚してその財産分与という形で財産を奥さんの名義に変えて差し押さえを回避しようとしたことが話題となりましたが、あれも詐害行為になりうる行為です。


今回の問題の場合、債権者は、債務者に対してお金を貸し付けています。
債務者は、唯一の資産である土地を安い値段で第三者に売却したそうです。
この第三者のことを受益者といいます。
これによって債権者に対する借金を返済できるような経済状況ではなくなってしまいました。
債権者からするとふざけんなって状態です。

このように債務者が債権者を害することを知って土地を売却していた場合、
債権者は、売買契約を取り消すことができます。これが詐害行為取消権です。

要するに詐害行為取消権とは、ふどうさん大学流に翻訳すると、「ズルは許しません」
ということです。

ここまでよろしいでしょうか。

話はさらに続きます。ここまでで選択肢のまだ半分です。
この次からさらにポイントです。

「当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。」

ここです。
これどういう意味か分かりますでしょうか。

ズルしたやつから受け取った人間が時効だって言えるかってことを聞いています。
これ私実際の判例の判決文を読んだんで、どういうことが具体的にかつ簡単に説明します。


Aさんが株式会社Xに数千万円貸しました。そして連帯保証人に社長さん本人がなりました。
その後、会社の業績が悪くなってお金が返せなくなりました。
このままでは自分の資産もAに差し押さえられると思った社長さんは、
自分の持っている不動産をBさんに贈与しました。

これに気付いたAさんは、詐害行為取消権に基づき債務者と上告
人との間の贈与契約の取消し及び贈与された不動産につき経由された所有権移転登
記の抹消登記手続を求めたんです。

これに対して、贈与を受けたBさんの反対意見はこうです。
債権は期限の定めのない商事債権であり、五年の経過により時効によって消滅したから、
Aの社長に対する連帯保証債務履行請求権は消滅したって主張したんです。

だから不動産は渡さないよって対抗したんです。
ちょっと面白くないですか、すごい戦いですよね。


ちなみに補足ですが、
昨年の民法改正で、商事債権の消滅時効やその他の短期消滅時効制度が廃止されて、
権利が行使できる時(客観的起算点)から10年、権利行使ができることを知った時(主観的起算点)から5年で
消滅時効が完成することに統一されていますので一応お伝えしておきます。

さあ、皆さんならどういう判決を出しますか?
実際に裁判所が言った判決文をご紹介します。


詐害行為の受益者Bは、詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、
これが行使されると債権者Aとの間で詐害行為が取り消され、同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、
その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば右の利益喪失を免れ
ることができる地位にあるから、
「右債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者」に当たり、
右債権について消滅時効を援用することができるものと解するのが相当である。

つまりBは時効だって言える立場にあるよってことです。

お分かりいただけましたでしょうか。
この壮大な裁判が宅建試験の1選択肢に出てきているんです。

正直、詐害行為取消権は過去宅建試験であまり出題されていないので、そんなに重要ではありません。
宅建試験の過去問には、このように難しい判例が時々出てきますが、そんなに深堀しなくても十分合格できますので、
今回の詐害行為がよくわからなかったという方も心配しないでください

今日の動画役に立った方、グッドボタンとチャンネル登録よろしくお願いします。

7月に入って不動産大学の過去動画の再生数が一気に上がっています。
合格に向けてラストスパートに入った証拠です。どうか皆さんが合格できることを願って、
毎日意味のある10分をお届けしたいと思います。
ということでまた明日。
posted by 棚田行政書士 at 18:00| 東京 ☀| Comment(0) | 宅建試験 超短期間で合格する方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。